「工事見積」について
今回のコラムでは、みなさんが家づくりを進めていく上で非常に重要な項目である「見積」について解説したいと思います。
住宅を計画する上ではほとんどの方が、「自分の用意できるご予算」と「住宅会社が提示する工事見積」を比較しながら、予算を超えないように家づくりを進めていくことを望んでいると思います。
しかしながら、初めて家を建てる方にとっては、「工事見積」というものはとても分かりにくいものであるかもしれません。「概算見積」と「正式な見積」との違いも分かりづらいでしょうし、そこにどんな工事が入っていて、何が入っていないのかわからずに提示を受けていることもあるでしょう。
それが故に、後で後悔することも少なくないとお聞きします。
これまで家づくりを体験した方の体験談でよく聞くのが「請負契約をしたときの見積から最終的に実際にかかった金額が大きくオーバーしてしまった」というケースです。
これには明確な原因があります。
代表的なケースは、その住宅会社と契約した時点での見積がとても甘い場合です。
「しっかりと打ち合わせをしていない状態の図面や仕様」をベースとした「概算見積」で工事請負契約を結んでしまっているパターンなどはこれに当てはまります。
例えば、図面はあくまでも1~2回の打ち合わせだけで、仕様についても細かく決める前の住宅会社の標準仕様だけで、それで正式に「工事請負契約」を結んでしまうケースです。
住宅会社の営業マンとしてはできるだけ早く請負契約を結びたいので、こんな曖昧な状態での簡単な見積だけで契約を迫ります。「今月中に契約してくれれば○○をサービスします」などの営業トークに乗ってしまい、お客様も契約してしまうという例も非常に良く聞くお話です。
この状態で請負契約を結んでも、以降の細かい打ち合わせの中で間取りが変わったり、床面積が増えたり、仕様自体のグレードがアップしていくと、当然ですが金額も増えていくことは充分にあり得ます。
それを段階ごとにしっかりと把握しながら進めれば良いのですが、多くはなんとなく進んでいくので、いつの間にかかなりの金額をオーバーしてしまうことが起こってしまうわけです。
このような家づくりの流れは決して良くはないですよね。
やはり、住宅会社としっかり打ち合わせをして、間取りやデザイン、細かい仕様もひとつひとつ時間をかけて決めていき、全てが決まった時点での見積を確認して、納得していただいた上で「請負契約」を締結することが基本だと思います。
とは言っても、建築を依頼する会社を決める前の段階では、これらの打ち合わせを様々な会社とそれぞれやっていくことはとても無理があります。お客様自身のエネルギーもかかりますし、住宅会社としても「自社にまだ決めてくれていないお客様」と、そこまで綿密な打ち合わせをすることは経営的な効率を考えると現実に対応が難しいと思います。
なので、まずは建築を依頼しても良いという信頼できる住宅会社を1社に絞ることから始めてください。
その1社に絞るための判断材料として、会社の信頼性や家づくりの方向性、住宅自体の性能などをしっかりと見て比べてください。
その中で依頼先の候補を決めた会社に対して、プレゼンテーションの依頼をしてください。
そのプレゼンテーションを受けた中で、最も信頼できる会社を絞るという流れが良いと思います。
そこではコストも重要なので、その提案だとするとどのくらいになるか概算的な見積等を提示してもらうとよいでしょう。
その時点では概算となると思いますが、それをベースとして自分たちの予算内で今後進めても大丈夫だと判断できる会社を選択するということです。そして、次はその会社だけとしっかりと細かい打ち合わせを進めていく、という流れが良いと思います。
そこでしっかりと時間をかけて間取りや仕様を決めていき、「正式な見積も提示してもらったうえで請負契約を結ぶ」という形であれば、想定外の予算オーバーなどにならずに、納得して家づくりが進んでいく可能性が高いと思います。
できれば着工前にはすべて仕様などを決めておくと、工事中に思わぬ追加が出るということも少なくなると思います。
そういうことを踏まえて、関工務所では「請負契約」の前に「建築申込」というプロセスを用意しています。
当社の家づくりの考え方をご理解・共感いただいた方には、完成見学会などで実際の建物を体感していただいた上で、プランニングのご提案をさせていただきます。
そして、金額についても図面や仕様に基づいた概算見積についてもご説明をいたします。この概算見積は、この時点で図面や仕様が決定しているわけではないので「概算」と呼んではいますが、実際は本見積と同様の細かい積算をしているので、かなり正確なものをご提示するようにしています。これをベースに図面や仕様が変化していくに従い見積も変化していくわけです。なので、この前提となっている「図面や仕様」と「見積金額」が、ご予算内での建築が可能かどうかの判断材料となると思います。
これらの判断材料をご提示したうえで、お客様が建築依頼先として関工務所を選択する意思を決定していただければ、「建築申込書」を交わしていただき、細かい打ち合わせに進んでいきます。
この「建築申込」は、あくまでも当社と「請負契約」を前提とした詳細の設計業務を進める意思を表示していただくプロセスとなります。このまま問題なく「請負契約」まで進んでいくことがほとんどですが、仮に何らかの理由で「請負契約」までいかなかった場合は、実費のみの清算で終了とさせていただいています。
お客様に「建築申込」をいただいてからは、じっくりと時間をかけて間取りの修正や全ての仕様を決めていくのです。
仕様については実物やサンプル、ショールームなどの見学を交えながら、一つずつ決定していきます。もちろん、お客様のご予算を把握しながら予算オーバーにならないようにコストコントロールしていくのも私達の役割です。
「建築申込」から「工事請負契約」まで、数か月かかることも珍しくありません。
お客様自身が後から後悔しないように、じっくりと打ち合わせをしていくためにもそういう期間を設けています。
決してスピード重視ではなく、1棟1棟時間をかけてでも丁寧に確実に作り上げていくことを大事にしているからこそ、このような流れで進めるべきと私たちは考えています。
このような考え方に共感いただける方は、是非お気軽に家づくりの相談をお問い合わせください。